(代表)取締役の就任承諾書と辞任届への押印について

皆さま、こんにちは 名古屋市南区の司法書士加藤芳樹です。

さて、当サイトのブログ記事は自分の備忘録としての性格が強いのですが、有難いことに毎日結構な人数の方に閲覧していただいております。記事を書くのは結構な労力が必要となるのですが、閲覧して頂ける方の存在は大きなモチベーションになっています。ありがとうございます。

2021年6月30日のブログ記事「商業・法人登記 添付書面への押印の要否」を読まれた方から「取締役の就任承諾書と辞任届への押印は不要ですか」とご質問を受けました。

そこで、あらためて書面で作成するその2点の添付書面に絞って解説してみたいと思います。

よろしくお願いします。

法令により押印又は印鑑証明書の添付が求められる書面に押印義務がある

商業法人登記手続きにおいては、法令の規定により押印又は印鑑証明書の添付が求められていない書面への押印は不要(法務局で審査されない)となっています(令和3年1月29日付け法務省民商第10号民事局長通達)。

では、(代表)取締役の就任承諾書と辞任届への押印の法令上の規定はどうなっているのでしょうか。

代表取締役又は取締役の就任承諾書への押印と法令上の根拠

取締役会を置いていない株式会社(以下「取締役会非設置会社」という)の取締役の就任承諾書への押印の根拠条文は商業登記規則61条4項、取締役会を置く株式会社(以下「取締役会設置会社」という)の代表取締役又は代表執行役の就任承諾書への押印の根拠条文は同規則61条5項です。

設立(合併及び組織変更による設立を除く)の登記申請書には、取締役会非設置会社については設立時取締役につき、取締役会設置会社については設立時代表取締役又は設立時代表執行役ついて、市町村長の作成した印鑑証明書の印鑑、いわゆる実印で押印した就任を承諾したことを証する書面と、当該印鑑についての市町村長作成の証明書を添付しなければならないとされています。

また、取締役又は代表取締役若しくは代表執行役の就任(再任を除く(注))の登記申請書には、取締役会非設置会社については取締役につき、取締役会設置会社については代表取締役又は代表執行役について、実印で押印された就任を承諾したことを証する書面と当該印鑑についての市町村長作成の印鑑証明書を添付しなければならないとされています。

上記以外の場合は就任承諾書には押印が不要となります。例えば、取締役会非設置会社の取締役の再任、代表取締役の就任の場合、取締役会設置会社の代表取締役若しくは代表執行役の再任、取締役の就任の場合の就任承諾書には押印は不要です。

なお、取締役会非設置会社については、定款の定めに基づく取締役の互選により代表取締役を選定した場合には代表取締役に就任を承諾したことを証する書面が必要となりますが、株主総会の決議又は定款で代表取締役を選定した場合には代表取締役に就任を承諾したことを証する書面の添付は不要です。

取締役会非設置会社の取締役は各自代表が原則ですが、取締役が2名以上いる場合に定款または株主総会の決議により代表取締役を選定した場合には選定されなかった取締役の代表権が剥奪制限されるとする考え方(代表権はく奪消滅説「商業登記の栞8有限会社の代表取締役」登記研究646号(テイハン,平成13年)117頁以下)に基づきます(会社法349条1項)。

この場合、代表取締役として選定する行為は選定されなかった取締役の代表権を剥奪制限する行為であって、代表取締役として選定された者は既に代表権を有する取締役への就任を承諾をしているので、取締役への就任承諾書の他に代表取締役としての就任承諾書は不要と考えます。

一方、取締役の互選により取締役の中から代表取締役を選定する旨の定款の定め(会社法349条3項)がある取締役会非設置会社の取締役は、取締役会設置会社の取締役と同様に代表権がない取締役として選任されており、取締役の互選により代表取締役として選定され初めて代表権が付与されると考えますので、取締役への就任承諾書の他に代表取締役への就任承諾書も別途必要となります。

この辺りは登記実務上の難しい解釈の話になりますので、一般の方には判断が難しいかもしれません。念のために上記で不要と説明したケースであっても代表取締役への就任承諾書を取得しておかれた方が無難だと思います。

(注)商業登記規則61条4項・5項に規定する印鑑証明書を添付しなくても良い「再任」とはどのようなケースをいうのでしょうか。

この点につき令和4年(2022年)9月21日に別記事「取締役の再任と印鑑証明書の添付」に纏めましたのでご参照ください。

代表取締役又は取締役の辞任届への押印と法令上の根拠

代表取締役又は取締役の辞任届への押印の根拠条文は商業登記規則61条8項であり、下記のとおりです。

商業登記規則61条8項
代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。

登記所(法務局)に印鑑を提出している代表者がいる株式会社の場合は、印鑑を提出した代表取締役若しくは代表執行役又は代表権を有する取締役若しくは代表権を有する執行役の辞任届に登記所に提出している印鑑または市町村長の作成した印鑑証明書の印鑑で押印する必要があります。

登記所に印鑑を提出した代表者がいない株式会社については、代表者の辞任届に市町村長の作成した印鑑証明書の印鑑で押印する必要があります。

上記以外の方の辞任届は押印が無くても登記は受理されます。

つまり、印鑑を登記所に提出している代表者がいる株式会社の場合は、その印鑑を提出している代表取締役等の辞任届には押印が必要となりますが、それ以外の方の辞任届は押印は不要で、たとえ代表取締役であっても印鑑を登記所に提出していない方については辞任届に押印がなくても登記は受理されるということです。

印鑑を提出している代表者がいない株式会社の場合は、代表者である代表取締役等の辞任届については全ての代表取締役等の辞任届につき個人のいわゆる実印による押印が必要となります。

有限会社の取り扱いについて

有限会社は株式会社として扱われ(会社法の施行の伴う関係法律の整備等に関する法律2条)、現在存続している有限会社は正式には特例有限会社と呼びます(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律3条2項)。

特例有限会社は取締役会非設置会社として就任承諾書の押印については商業登記規則61条4項、辞任届への押印については同規則61条8項が適用されます。

就任承諾書や辞任届には署名押印してもらうことが望ましい

以上登記手続き上就任承諾書や辞任届について押印が無くても登記が受理されるケースのご説明を致しましたが、紛争を未然に防ぐ予防法務の観点からこれらの書面には署名捺印をしてもらうことを推奨致します。

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