監査役の退任登記 後任者がいないとき 

皆さん、こんにちは、名古屋市南区の司法書士・行政書士の加藤芳樹です。

株式会社や特例有限会社の監査役が退任し、監査役が誰もいなくなってしまったけど、その後任者がいない、これは、良くあるケースです。

その場合には、会社に監査役を置くこと自体をやめることも選択肢の一つです。監査役の退任の登記とそれに付随、関連する登記について解説します。

1.監査役の退任原因と登記

監査役の退任原因は、任期満了、辞任、解任、死亡などですが、このうち、任期満了又は辞任により退任したことにより、法令又は定款に定めた監査役の員数を欠くことになった場合には、これらの原因で退任した監査役は後任者が選任され就任するまで、なお、監査役の職務を行わなければならない権利義務があるとされています(会社法346条1項)。

この場合、後任の監査役が新たに選任され就任し、法令又は定款に定める員数を満たすようになるまで、退任の登記を申請することができず、新たに就任する監査役の就任登記と、辞任又は任期満了による監査役の退任の登記を同時に申請しなければなりません。

監査役の退任の原因年月日は、本来の辞任日は又は任期満了日となります。

2.後任者が決まらない場合 監査役を置く旨の定款規定の廃止の検討

任期満了又は辞任により監査役が退任し、法令又は定款に定めた監査役の員数を欠くことになった場合には、後任者が選任され、就任するまで監査役の退任の登記を申請することができません。

また、解任や死亡などの他の原因による退任であれば、退任の登記は申請できますが、後任者を選任しなければなりません。

では、後任の監査役として適当な人がいない場合にはどうしたら良いでしょうか。

もし、取締役会を設置していない大会社(最終の貸借対照表における資本金の額が5億円以上又は負債額が200億円以上の株式会社,会社法2条6号)以外の株式会社または、特例有限会社で、監査役を会社に置く必要がないということでしたら、監査役を置く旨の定款の規定を廃止することを、検討されてみてはいかがでしょうか。

必要な登記は、株式会社と特例有限会社で異なりますので、分けて説明します。

なお、取締役会を設置する株式会社でも、大会社以外の株式会社で公開会社でない株式会社(発行する全ての株式につき、定款による譲渡制限に関する規定の適用がある株式会社)については、定款変更により取締役会と監査役を置く旨の定款の規定を廃止することができます。

3.株式会社の場合 監査役の退任登記と監査役設置会社の定めの廃止の登記など

監査役を置く旨など監査役に関する定款の定めは、株主総会の決議により廃止します。監査役が退任する前に、監査役を置く旨の定款の定めを廃止した場合には、廃止の効力発生時において監査役は任期が満了し退任します(法336条4項1号)。

監査役の退任登記、監査役設置会社の定めの廃止の登記、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めが登記されている場合には、この定めの廃止の登記も必要となります。

登録免許税は、監査役の退任登記及び監査役の監査の範囲を限定する旨の定めの廃止登記は、いずれも同一区分(登録免許税法別表1第24号(1)カ)で1万円(資本金が1億円超の会社については3万円)、監査役設置会社の定めの廃止の登記は、3万円(登録免許税法別表1第24号(1)ツ)で、合計4万円(又は6万円)となります。

参考までに、例として、令和3年6月1日に唯一の監査役が辞任して、その後の6月10日に監査役を置く旨や、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止した場合の登記事項記載例を示します。

「役員に関する事項」
「資格」監査役
「氏名」甲野太郎
「原因年月日」令和3年6月1日辞任
「役員に関する事項」
「資格」監査役の監査の範囲に関する事項
「役員に関するその他の事項」
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある
「原因年月日」令和3年6月10日廃止
「監査役設置会社に関する事項」
「原因年月日」令和3年6月10日廃止

4.特例有限会社の場合 監査役の退任登記と監査役を置く旨の定款規定の廃止

特例有限会社の場合は、監査役は任意機関とされ、これを置く場合には、必ず定款に監査役を置く旨の規定を定める必要があり、「置くことができる」といった任意的な規定を定めることはできません。

監査役が退任したということは、当然ですが、会社の定款には必ずこの定めがあるはずです。

監査役が、辞任または定款の規定により任期満了して退任したとしても、法令又は定款に定めた員数を欠いた場合には、その後任者を選任し就任の登記と同時でなければ退任の登記を申請することはできませんが、定款の監査役を置く旨の定めを廃止するすることで、辞任又は任期満了による退任登記を申請することができるようになります。

特例有限会社は株式会社と異なり、監査役設置会社である旨と、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めは、登記事項ではありませんので、監査役の退任登記だけを申請すれば足ります。

この場合は、監査役の退任を証する書面(辞任届など)の他に、監査役を置く旨の定款規定を廃止したことを証する株主総会議事録も併せて添付する必要があります。

なお、監査役を置く旨など監査役に関する定款の定めの廃止は、株主総会決議により廃止するのは株式会社と同じです。

但し、株式会社と異なり、特例有限会社の監査役と取締役については、法律上任期はなく、監査役を置く旨の定款の定めを廃止した場合でも、監査役の任期が満了し退任するとする会社法の規定は適用されません(整備法18条)。

監査役が死亡、解任など辞任又は任期満了以外の原因で退任した場合には、監査役を置く旨の定款の規定を廃止しなくても、これらを原因とする監査役の退任登記を申請することはできます。

しかし、法令又は定款で定めた員数を欠いた場合には、定数を満たすように監査役を選任する必要があります。

この場合には、監査役が死亡等により1人もいない状態になったのであれば、監査役を置く旨の定款規定を廃止し、定款に定めた員数を欠けた状態となっていたとしても増員の必要がない場合には、定款の監査役の員数規定を変更することで監査役の選任を回避することができます。

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