相続登記の登録免許税の免税は持分相続にも適用されるか

相続登記のご相談を受けていると、「持分相続でも100万円以下の免税が使えるのですか?」というご質問をよくいただきます。

相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%が課税されるため、費用面から申請をためらわれる方も少なくありません。
その負担を軽減するため、一定の土地については登録免許税が免除される制度が設けられています(租税特別措置法第84条の2の2第2項)。

では、不動産の価額が100万円を超えていても、持分割合を乗じると100万円以下になる場合は免税の対象となるのか?
この記事では、持分相続における免税の可否と、比較のために重要となる「免税にならないケース」について、司法書士の視点から分かりやすく解説します。

不動産の価額に持分割合を乗じて100万円以下となれば免税対象となる

租税特別措置法84条の2の2第2項において「登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない」とあります。

この、登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、その第2項において、前項に規定する登記をする場合において当該登記が、不動産の持分の取得に係るものである場合には、当該不動産の価額は持分割合を乗じて計算した金額によるとあります。

例えば、不動産価額180万円の土地の持分2分の1が被相続人の所有であり、これを対象とする相続による持分全部移転登記の課税標準たる不動産の価額は90万円であり、100万円以下ですので登録免許税が免除されることになります(租税特別措置法84条の2の2第2項)(『登記研究851』139頁(テイハン,平成31年)参照)。

一方、180万円の土地全体が被相続人の所有であり、これを相続人甲・乙が各持分2分の1の割合で相続する所有権移転登記の場合は、各自の持分2分の1を乗じると90万円と100万円以下となりますが、租税特別措置法84条の2の2第2項による免税の判断基準は、課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるか否かです。

当該所有権移転登記の課税標準たる不動産の価額は180万円ですので、租税特別措置法84条の2の2第2項による免税の対象とはなりません。

当然に免税とはならず申請書に法令の条項を記載する必要がある

租税特別措置法84条の2の2第2項の要件を満たしても当然に登録免許税が免除されるのではなく、以下のとおりに申請書に法令の条項を記載する必要があります。

申請書記載例(被相続人甲名義の土地の共有持分(持分2分の1,持分割合を乗じた不動産価額が100万円以下の土地)全部を乙が相続)

登記の目的  甲持分全部移転

原   因  令和4年〇月〇日相続

相 続 人  (被相続人 甲)
        名古屋市〇区〇町〇〇番地
        持分2分の1 乙

添付 書類  登記原因証明情報  住所証明情報

令和8年4月10日申請 名古屋法務局 熱田出張所

登録免許税 租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税

不動産の表示 (省略)

参考条文

租税特別措置法

(相続に係る所有権の移転登記等の免税)
第84条の2の2第2項 
個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和9年3月31日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成16年法律第123号)第2条第10号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。

登録免許税法

(不動産等の価額)
第10条 別表第1第1号、第2号又は第4号から第4号の3までに掲げる不動産、船舶、ダム使用権、公共施設等運営権又は樹木採取権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権、公共施設等運営権又は樹木採取権(以下この項において「不動産等」という。)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。この場合において、当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。

 前項に規定する登記又は登録をする場合において、当該登記又は登録が別表第1第1号又は第2号に掲げる不動産又は船舶の所有権の持分の取得に係るものであるときは、当該不動産又は船舶の価額は、当該不動産又は船舶の同項の規定による価額に当該持分の割合を乗じて計算した金額による。

租税特別措置法第84条の2の3は、令和8年度税制改正により、令和8年(2026年)4月1日から「84条の2の2」に条文番号が変更されました。今回の改正は条文番号の整理であり、制度内容に変更はありません。

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更新履歴

令和8年4月10日 租税特別措置法の条文番号変更(84条の2の3 → 84条の2の2)に対応して内容を更新
令和8年4月25日 文章構成を調整し読みやすさを改善(内容に影響なし)

投稿者プロフィール

加藤芳樹
加藤芳樹司法書士・行政書士
開業22年目となる名古屋市の司法書士・行政書士です。元設備保全マン、趣味は音楽、ギター、テニス、語らうことです。人には親切にをモットーとしており司法書士を天職だと思っています。自分の勉強を兼ねた業務上の情報を中心に執筆しています。

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