医療法の改正と持分の定めのある医療法人の定款変更認可申請 

皆さん、こんにちは、名古屋市南区の司法書士・行政書士の加藤芳樹です。

前回の記事「医療法の改正と医療法人の定款変更認可申請」において、平成27年の医療法の改正により、定款又は寄付行為に理事会に関する規定のない医療法人については、定款又は寄付行為の変更をしなければならず、その際には、定款変更等をしようとする医療法人の類型により「医療法人の機関について」(平成28年3月25日付け医政発0325第3号厚生労働省医政局長通知)に記載のある改正後の定款例又は寄付行為例や、都道府県のホームページなどに掲載されているモデル定款又は寄付行為を参考に、変更を行うということを説明しました。

上記の「医療法人の機関について」に記載のある改正後の定款例又は寄付行為例には、新旧対照表が掲載されており、これを参考に定款又は寄付行為の変更を行えば良いのですが、医療法人の多くを占める、持分の定めのある社団法人型の医療法人(経過措置型医療法人)については、定款例は掲載されておらず、出資額限度医療法人については、定款例に誤りがありますので、この二つの類型について定款変更の注意点を解説します。

1.持分の定めのある医療法人の定款変更の注意点

「医療法人の機関について」に記載のある改正後の定款例には、経過措置型医療法人の定款例はありませんので、記載のある同じ持分の定めのある社団法人である出資額限度法人の定款例「(平成16年医政発0831001号)別添の2)の一部改正(別添5)」を参考にして定款変更案を考えます。

注意すべき点は、次の2点です。

1.持分の払戻しに関する規定は、変更してはいけない。
2.改正後の定款例には、分割に関する規定が新設されていますが、持分の定めのある医療法人は分割ができませんので、分割に関する規定を定めてはいけません。

もう少し詳しく説明します。

2.定款の持分の定めを変更してはいけない

経過措置型医療法人の定款には、社員資格を喪失した際の持分の払戻しの規定「例:社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。」や、解散時に、出資額に応じて残余財産を分配する旨の規定「例:本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。」が定められていますが、今回の定款変更は、平成27年改正に適合させるために、理事会に関する規定を定めるための定款変更ですので、「出資額限度法人の定款例(平成16年医政発第0831001号)別添2)の一部改正(別添5)」のように、払戻額を、出資額を限度とする様に変更してはいけません。

3.持分の定めある医療法人は分割をすることができない

分割には、吸収分割と新設分割があり、吸収分割とは、医療法人が、その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割後他の医療法人に承継させることをいい、新設分割とは、一又は二以上の医療法人が、その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割により設立する医療法人に承継させることをいいます。

但し、医療法人の内、持分の定めのある医療法人、社会医療法人、特定医療法人、医療法42条の3第1項による実施計画の認定を受けた医療法人は、分割を行うことはできません(医療法60条,医療法施行規則35条の6)。

持分の定めのある医療法人(経過措置型医療法人,出資額限度医療法人)は分割ができませんが、「出資額限度法人の定款例(平成16年医政発第0831001号)別添2)の一部改正(別添5)」の改正後のモデル定款には、分割に関する規定が記載されています(例:「第47条 本社団は、総社員の同意があるときは、〇〇県知事の認可を得て、分割することができる。」)。

モデル定款には分割に関する規定がありますが、持分の定めのある医療法人は分割をすることができませんので、分割に関する規定は入れないようにします。

なお、「医療法人の合併及び分割」(平成28年3月25日付け医政発0325第5号厚生労働省医政局長通知)では、「社会医療法人、特定医療法人、持分の定めのある医療法人については、吸収分割医療法人及び新設分割医療法人にはなれないが、吸収分割承継医療法人になることができる」とありましたが、平成30年3月30日付け医政発0330第33号において当該箇所は削除されています。

参考までに、持分の定めのある医療法人が分割できないことの根拠条文を、下記に掲げておきます。

医療法
第二款
分割第一目 吸収分割
第六十条 医療法人(社会医療法人その他の厚生労働省令で定める者を除く。以下この款において同じ。)は、吸収分割(医療法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の医療法人に承継させることをいう。以下この目において同じ。)をすることができる。この場合においては、当該医療法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該医療法人から承継する医療法人(以下この目において「吸収分割承継医療法人」という。)との間で、吸収分割契約を締結しなければならない。

医療法施行規則
法第六十条の厚生労働省令で定める者
第三十五条の六 法第六十条の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者とする。
 社会医療法人
 租税特別措置法第六十七条の二第一項に規定する特定の医療法人
 持分の定めのある医療法人
 法第四十二条の三第一項の規定による実施計画の認定を受けた医療法人

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