医療法の改正と医療法人の定款変更認可申請 

皆さん、こんにちは、名古屋市南区の司法書士・行政書士の加藤芳樹です。

医療法の一部を改正する法律(平成27年法律第74号)により改正医療法が施行(平成28年9月1日施行)されてから随分たちますが、理事長の変更登記を依頼された医療法人の定款を見せてもらうと、未だに理事会の規定が設定されておらず、「理事長は理事の互選によって定める」などと規定されている場合があります。

この場合でも、定款の規定より理事会で理事長を選出するという医療法の規定(法46条の7第2項3号)が優先されますので、登記手続においては定款変更を経ずとも理事会議事録などを添付することで、理事長の就任登記は可能です。なお、この登記手続には、定款の添付は不要です。

登記は可能ですが、理事会の規定が定められていない医療法人は、この規定を定める定款又は寄付行為の変更の認可申請をしなければなりません。

この業務は、行政書士の業務範囲となります。当事務所は司法書士業務がメインですが、司法書士業務に付随して行政書士業務も行っています。定款又は寄付行為の変更認可申請について、何回かに分けて解説致します。

1.改正医療法と定款又は寄付行為の変更認可申請

医療法の一部を改正する法律(平成27年法律第74号)により医療法が改正され、本改正により、社団法人型の医療法人については、理事、監事、社員総会、理事会(法46条の2第1項)が、財団法人型の医療法人については、評議員、評議員会、理事、監事、理事会(同条2項)が必置機関とされ、従来は任意機関とされていた理事会を設置することが義務となり、理事会は、定款又は寄付行為に定めなければならいない事項とされました(法44条2項7号)。

そして、理事会に関する規定が定款又は寄付行為に定められていない医療法人は、改正法の施行日(平成28年9月1日)から2年を経過する日(平成30年8月31日)までに認可申請をしなければならないとされています(改正法附則6条1項)。

定款または寄付行為の変更は、社員総会の決議後、都道府県知事の認可を受けることにより効力が発生します(法54条の9第3項)。なお、変更前と同一の都道府県内での主たる事務所の所在地の変更と、公告の方法の変更については、知事の認可は要せず、社員総会の決議だけで、定款又は寄付行為の変更の効力が生じます。

既に、改正法の施行日(平成28年9月1日)から2年を経過していますが、定款又は寄付行為の変更の認可申請を行っていない法人は、当該認可申請をしなければなりません。

理事会に関する規定を定めるなど、改正法に対応するための定款又は寄付行為の変更は、「医療法人の機関について」(平成28年3月25日付け医政発0325第3号厚生労働省医政局長通知)の別添の改正後の定款例又は寄付行為例や、都道府県のホームページなどに掲載されているモデル定款又は寄付行為を参考に行います。

まずは、定款又は寄付行為の変更を行おうとする医療法人が、どの類型の法人であるかを知る必要があります。

2.医療法人の類型

医療法人の類型は、大きく分けると社団法人型と財団法人型に分類することができます。社団法人型には、出資持分の定めのある法人とない法人があり、平成18年の医療法改正後(平成19年4月1日施行)は、出資持分の定めのある医療法人は、設立することができなくなっています。

出資持分とは、社員が出資額に応じて退社時に払戻しや、解散時に残余財産の分配を受けることができる権利です。

医療法人の類型は、下記のとおりです。

社団法人型医療法人


持分の定めのあるもの

一般の持分あり社団平成18年の医療法改正(平成19年4月1日施行)当時に存在した持分の定めのある社団医療法人で、当面の間存在が認められている医療法人(経過措置型医療法人(医療法附則10の2))
出資額限度医療法人上記の内、社員の退社や解散時の払戻額が出資額を限度とする旨が定款で定められている医療法人

持分の定めないもの

一般の持分なし社団基金制度を採用していない一般の持分の定めのない医療法人
基金拠出型法人平成18年改正医療法(平成19年4月1日施行)に、新たに認められた活動資金の調達手段である基金制度を定款の定めにより採用している社団法人
社会医療法人
平成18年改正医療法により新設された類型で、医療法42条の2第1項各号に該当するものとして政令の定めるところにより都道県知事の認定をうけた社団法人
税制上の優遇措置があり、定款の定めにより一定程度の収益事業を行うことが認められています。
特定医療法人事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき政令で定める要件を満たすものとして、政令で定めるところにより国税庁長官の承認を受けた社団法人(租税特別措置法67条の2第1項)。税制上の優遇があります。

財団法人型医療法人

通常の財団一般の財団医療法人
社会医療法人平成18年改正医療法により新設された類型で、医療法42条の2第1項各号に該当するものとして政令の定めるところにより都道県知事の認定をうけた財団法人
税制上の優遇措置があり、寄付行為の定めにより一定程度の収益事業を行うことが認められています。
特定医療法人事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき政令で定める要件を満たすものとして、政令で定めるところにより国税庁長官の承認を受けた財団法人(租税特別措置法67条の2第1項)。税制上の優遇があります。

次回に続きます。よろしくお願いします。
当事務所は、司法書士と行政書士を兼業しており、各種法人について、登記手続の他に登記完了後の監督官庁への届出や、定款変更の認可申請にも対応可能です。

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