株式会社の定款認証手数料の改定(値下げ)

※令和6年12月1日に改正公証人手数料令が施行されたことに伴い本稿を加筆修正しました。

皆様、こんにちは 名古屋市南区の司法書士・行政書士の加藤芳樹です。

さて、令和4年1月1日から株式会社の設立登記を申請する前に行う定款認証手数料が、従来の一律5万円から定款記載の「資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」が100万円未満であれば3万円(令和6年12月1日から一定の要件を満たすと1万5千円)に、100万円以上300万円未満の場合には4万円に値下げになっています。

さらに、令和6年12月1日から一定の要件を満たす定款記載の「資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」が100万円未満の株式会社の定款認証手数料が、従来の3万円から1万5千円と値下げされました(公証人手数料令35条1号)。

改正により、定款記載の「資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」が300万円未満であれば従来に比べ最大3万5千円減額できますので、費用面から株式会社の設立がし易くなったといえます。

本稿において、改正された株式会社の定款認証手数料について詳しく解説してみました。

株式会社の設立登記をお考えの方の参考になれば幸いです。

株式会社の定款認証手数料が1万5千円となる要件

令和6年12月1日施行の改正公証人手数料令35条1号により次の全ての要件を満たす定款記載の「資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」が100万円未満の株式会社の定款認証手数料は、1万5千円となります。

  • 発起人の全員が自然人であり、かつその人数が3人以下であること
  • 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること
  • 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと

一般社団法人及び一般財団法人の定款認証手数料は従来通り一律5万円

今回の改正により定款認証手数料の値下げがあったのは、株式会社と資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第3項に規定する特定目的会社です。

特定目的会社の場合は、定款に記載又は記録された特定資本金の額が100万円未満の場合には定款認証手数料は3万円、同100万円以上300万円未満には4万円、300万円以上の場合は5万円となります。

なお、一般社団法人及び一般財団法人の定款認証手数料は従来通り一律5万円です。

参考:根拠条文 公証人手数料令第35条(定款の認証)

会社法第30条第1項(他の法令において準用する場合を含む。)並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第13条及び第155条の規定による定款の認証についての手数料の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額とする。

1 株式会社又は特定目的会社(資産の流動化に関する法律第2条第3項に規定する特定目的会社をいう。以下この号及び次号において同じ。)であって、その株式会社の定款に記載され、若しくは記録された資本金の額(定款に資本金の額に関する記載又は記録がなく、かつ、会社法第27条第4号に規定する設立に際して出資される財産の価額の記載又は記録がある場合にあっては、当該価額)又は資産の流動化に関する法律第16条第2項第4号の規定によりその特定目的会社の定款に記載され、若しくは記録された特定資本金の額(次号において「資本金の額等」と総称する。)が100万円未満である場合3万円(当該株式会社が次のイからハまでのいずれにも該当する場合にあっては、1万5千円
イその株式会社の定款に記載され、又は記録された発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること。
ロその株式会社の定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。
ハその株式会社の定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。

2 株式会社又は特定目的会社であって、資本金の額等が100万円以上300万円未満である場合 4万円

3 前2号に掲げる場合以外の場合 5万円

株式会社設立時の資本金の額の定め方と定款認証手数料の具体例 

株式会社を設立する際に作成する定款には、「設立に際して出資される財産の価額」または「設立に際して出資される財産の最低額」を定める必要がありますが(会社法27条4号)、資本金の額を定款で定めるか否かは任意です。

定款認証手数料を3万円(一定の要件を満たすと1万5千円)、4万円、5万円に区分する基準は定款記載の「資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」となりますので、発起人全員の同意により資本金の額を定めた(会社法32条1項3号)としても、その額は定款認証手数料を算定する上での基準にはなりません。

例えば定款で「設立に際して出資される財産の価額」を100万円、資本金の額を50万円と定めた場合には、定款認証手数料は3万円(一定の要件を満たすと1万5千円)となりますが、定款で資本金の額を定めず発起人全員の同意で資本金の額を50万円と定めた場合には、定款認証手数料を区分する基準は定款記載の「設立に際して出資される財産の価額」100万円ですので、定款認証手数料は4万円となります。

例えば定款で「設立に際して出資される財産の価額」を500万円、資本金の額を250万円と定めた場合には、定款認証手数料は4万円となりますが、定款で資本金の額を定めず発起人全員の同意で資本金の額を250万円と定めた場合には、定款認証手数料を区分する基準は定款記載の「設立に際して出資される財産の価額」500万円ですので、定款認証手数料は5万円となります。

定款に「設立に際して出資される財産の価額」ではなく「設立に際して出資される財産の最低額」を記載した場合には、定款認証手数料は一律5万円となります。

定款認証に必要なその他の費用

定款認証手数料を含む電子定款の認証等に係る費用は次のとおりです。

内容金額根拠条文
定款認証手数料定款記載の「資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」が100万円未満の場合には3万円(一定の要件を満たすと1万5千円)
同 100万円以上300万円未満の場合は4万円
上記以外は5万円
公証人手数料令35条
電磁的記録の保存300円同令41条の2
電磁的記録に記録された情報と同一の情報の提供(定款謄本)1通当たり700円同令41条の4本文
上記を書面により交付することによる加算額(表紙を除く定款のページ数+1(認証文のページ))×20円同令41条の4但し書

株式会社の定款記載の資本金の額が500万円、表紙を除く定款のページ数が7ページ、定款謄本を1通交付を受ける場合の定款認証に係る費用の総額は次のとおりです。

定款認証手数料5万円+電磁的記録の保存300円+同一情報の提供700円+書面交付の加算額160円((7+1)×20円)=5万1160円

なお、当事務所では定款を電子定款で作成していますが、紙で定款を作成する場合には4万円の収入印紙を貼付する必要があります。

株式会社などの各種法人の設立登記はお任せ下さい

定款には収入印紙4万円の貼付が必要なところ当事務所では定款を電子定款で作成しており、この4万円は不要となっています。株式会社をはじめとする商業・法人登記や相続登記などの不動産登記や相続放棄申述書の作成はお任せ下さい。
また、当事務所は140万円以下の民事紛争について、代理人として簡易裁判所における訴訟手続を行える認定司法書士の事務所です。
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