相続人に海外在住の日本人が含まれる場合の相続登記

皆さん、こんにちは 名古屋市南区の司法書士の加藤芳樹です。

遺産分割協議書を添付して相続登記を行う場合は、当該遺産分割協議書に登記の申請人(登記名義人になる方)以外の方が押印した印鑑につき、印鑑証明書を添付しなければならないとされています(昭和30・4・23民事甲742民事局長通達)。

とはいえ、遺産分割協議書は不動産登記以外にも必要となる可能性があるもので、また、遺産分割協議書の真正担保のためには印鑑証明書を添付することが望ましいと思われることから、実務上は、遺産分割協議書には、登記申請人を含む協議者全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付することが一般的と思います。

世の中がグローバル化している現在において、相続人の中に海外に居住している日本人の方(日本国籍を有し日本に住民登録がない方)がいらっしゃる場合も珍しくありませんが、その方については、日本国内において印鑑証明書や住民票を取得することができません。この場合は、印鑑証明書に代えて署名証明書を、住民票に代えて在留証明書を取得します。

以下詳しく解説します。参考になれば幸いです。

在外公館に署名証明書(不動産を取得する人は+在留証明書)を発給してもらう

在外公館(日本国大使館、総領事館)において、署名証明書を発給してもらう方法です。もっとも一般的と思われます。

申請者(相続人)の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するもので、日本に住民登録していない海外居住の日本人が、日本国内の手続における印鑑証明書の代わりになるものとして発給してもらいます。

署名証明書

形式

署名証明書には、形式1形式2があります。

形式1 署名証明書と相続人が領事の面前で署名及び拇印をした遺産分割協議書を綴り合わせて割り印を行うもの

形式2 相続人の署名を単独で証明するもの(印鑑証明書のように単体で存在する署名証明書)

形式1の場合は、事前に遺産分割協議書を海外在住の相続人に方に送っておく必要があり、手間ではありますが、不動産登記手続きにおいては、形式1で行うことが殆どと思われ、当事務所も形式1で行ってもらっています。

同職から形式2でも登記申請が受理されたと聞いたことがありますので、形式2でも良い法務局もあるのかもしれませんが、形式1で行う方が無難です。

なお、不動産登記手続上、署名証明書の有効期間は、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書と同様にありません。

必要書類

  • 日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効な日本国旅券等)
  • 形式1の綴り合わせによる証明を希望される場合には、日本から送った遺産分割協議書(注)

(注)不動産を取得する方(登記申請人)については、司法書士への登記委任状が必要です。相続登記の委任状に押す印鑑は認印でも良いですが、署名証明書でも結構です。委任状に署名証明書を添付する場合は委任状も送っておきます。

署名は領事の面前で行いますので、署名していない状態で持参する必要があります(遺産分割協議書に署名証明をしてもらわない他の相続人の署名捺印はあっても良いです)。

手数料

日本円で1700円程度で、現金(現地通貨)によるお支払いとなります。

在留証明書

外国における生活の本拠(住所)などを証明するもので、住民票の代わりとなるものです。不動産を取得する方については、署名証明書の他に在留証明書も必要となり、在外公館で発行してもらいます。

手数料は、日本円で1200円程度で現金(現地通貨)でのお支払いとなります。

署名証明や在留証明の詳細は、外務省ホームページの該当ページをご参照ください。

外国の公証人が作成した署名証明書を添付する

先例には、在外公館の署名証明に代えて、オーストラリアの公証人による署名証明でも良いとするもの(昭和48・4・10民三第2999号民事局第三課長事務代理回答)、ブラジルの公証人の署名証明でも良いとするもの(昭和54・6・29民三第3548号民事局第三課長回答,同日民三第3549号法務局民事行政第一部長・法務局民事行政部長・地方法務局長あて,民事局第三課長通知)などがあります。

外務省のホームページによると「居住地が日本の在外公館の所在地と離れている場合など、領事が作成した署名証明を取得することが困難なときは、外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記の申請をすることも認められています」とあり、外国の公証人が作成した署名証明でも在外公館発行の署名証明に代えることができます。

なお、登記申請書の添付書面で外国語で作成された文書には、翻訳文が必要となります。

日本の公証人に署名証明をしてもらう

海外在住の相続人の方が、日本に一時帰国されるタイミングで、日本の公証役場にて公証人に署名証明をしてもらう方法も認めらています。

以下は当事務所で行った手順です。

1.公証役場へ遺産分割協議書をメールして必要書類等の確認と、相続人の方に公証役場に行ってもらう日時の打ち合わせ

2.必要書類は、パスポートと在留証明書、署名証明の手数料は、遺産分割協議書1通あたり5500円でした(依頼する公証役場にご確認願います)。

3.指定された日時に相続人の方へ、必要書類、遺産分割協議書、認印(協議書に捺印は必須では必要ありませんが、捺印した方が良いと判断しました)を持参して公証役場へ行ってもらいました。

公証役場では、公証人の面前で遺産分割協議書に相続人の方が署名捺印をして、依頼者は「当公証人の面前で別添文書に署名押印した。よって認証する。」と記載された認証文を、遺産分割協議書に綴り合わせます。5分程度で終了しました。

相続登記などはお任せください

当事務所は、海外在住の相続人がいらっしゃるケースの相続登記など、相続登記全般の経験が豊富です。相続登記の手続きは当事務所にお任せください。
その他の不動産登記や相続放棄申述書の作成、株式会社をはじめとする商業・法人登記についても得意としております。
また、当事務所は140万円以下の民事紛争について、代理人として簡易裁判所における訴訟手続を行える認定司法書士の事務所です。敷金返還請求などの140万円以下の民事紛争や、債務整理についてもお気軽にご相談下さい。

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