法定相続人の範囲と相続分・代襲相続とは
皆さん、こんにちは 名古屋市南区の司法書士・行政書士の加藤芳樹です。今回は、相続の基本である法定相続人の範囲、相続分などについて現行民法(昭和56年1月1日以後に発生した相続に適用されます)に則してご説明致します。
参考になれば幸いです。
目次
法定相続人の範囲・順位
相続人の順位は民法において次のとおりに定められています。被相続人(故人)の配偶者は常に相続人となり、他に相続人があるときは、その他の相続人と同順位となります(民法(以下略)890条)。
(1)第一順位(被相続人の配偶者と子(胎児を含む)(またはその代襲相続人))(887条)
子は実子だけではなく養子も含みます。代襲相続については後述します。
胎児は、相続については既に生まれたものとみなされ(886条1項)、死産のときは、当初から存在していなかったものとされます(886条2項)
(2)第二順位(被相続人の配偶者と直系尊属)(889条1項1号)
被相続人の直系卑属(子や孫など(胎児を含む))で相続人となる人がいないときは、直系尊属(親・祖父母など)が相続人となります。
尊属とは親や祖父母など被相続人より上の世代の人です。親等が異なる直系尊属間では近い親等の人が先に相続人となります。
例えば被相続人の死亡時に母親と祖父が共に健在であった場合には、より親等の近い母親のみが相続人となり祖父は相続人とはなりません。直系尊属が相続人となる場合には代襲相続の規定は適用されず、死亡していた父親を祖父が代襲することはありません。
直系尊属には実親だけでなく普通養子縁組をしていた場合の養親も相続権を有します。特別養子縁組の場合には、養子と実親との親族関係が終了し(817条の2第1項)相続関係も発生しません。
(3)第三順位(被相続人の配偶者と兄弟姉妹(または代襲相続人))(889条1項2号・2項)
被相続人の直系卑属(子や孫など(胎児を含む))及び直系尊属(親、祖父母など)に相続人となる人がいないときは、被相続人の兄弟姉妹(またはその代襲相続人(甥・姪(胎児を含む))が相続人となります。
代襲相続
子が相続開始以前に死亡したとき、または相続人の欠格事由に該当し、若しくは廃除によって相続人の資格を喪失していたときは、その相続人の資格を喪失した者(被代襲者)の子(被相続人からみて孫(胎児を含む))が相続人となります(887条2項)。このことを代襲相続といいます。
被代襲者の子(孫)も相続開始以前に死亡していたとき、または欠格事由若しくは廃除によって相続人の資格を喪失していた場合には、さらにその子(被相続人からみてひ孫(胎児を含む))が代襲相続人となります(887条3項)。
注意が必要なのは、代襲相続人になれるのは被相続人の直系卑属に限られることです(887条2項但し書)。
被相続人の養子であった者が被相続人より先に死亡していたとしても、養子縁組前の養子の子(養子及び実子)は被相続人の直系卑属ではないので代襲相続人とはなりません。
第三順位である兄弟姉妹が相続人になるときには、被代襲者である兄弟姉妹の子(被相続人から見て甥や姪(胎児を含む))までが代襲相続人となります。甥や姪が仮りに被相続人よりも先に死亡していたとしても、その子は代襲相続人とはなりません(889条2項,887条3項は準用されていません)。
なお、なお、昭和23年1月1日から昭和53年12月31日までの間に相続が発生している場合は旧法が適用され、被代襲者である兄弟姉妹の子だけでなく、直系卑属は代襲相続人となります。
欠格事由・推定相続人の廃除
(1)欠格事由(891条)
民法891条に列挙されている次の事由に該当すると相続人となる資格が無くなります。
- 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者(1号)
- 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。(2号)
- 詐欺又は脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者(3号)
- 詐欺又は脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者(4号)
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者(5号)
(2)推定相続人の廃除(892条・893条)
被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えた、又は著しい非行をした遺留分を有する推定相続人(相続が開始した際に相続人となるべき人,被相続人の兄弟姉妹は遺留分を有しないので除く)の相続権の廃除を家庭裁判所に請求することができます。請求権者は、被相続人(となる者)または、被相続人がその意思を遺言で表示したときの遺言執行者です。家庭裁判所の審判により廃除が認められると推定相続人は相続人となる資格を失います。
廃除は推定相続人の相続権という重大な権利を剥奪するものであるので慎重に扱われており簡単には認められていません。
法定相続分
法定相続分は次の通りです(900条)。なお、法定相続分に縛られずに遺産分割協議で相続を決定することや、遺言で相続分を指定することはできます(902条)。
(1)子と配偶者が相続人であるとき
配偶者及び子(胎児を含む)の相続分は各2分の1
子が数人あるときの各自の相続分は2分の1を子の人数で割った割合となります。例えば配偶者と二人の子が相続人なら子の相続分は各4分の1となります。
(2)配偶者及び直系尊属が相続人であるとき
配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1
直系尊属が数人あるときの各自の相続分は3分の1をその人数で割った割合となります。例えば配偶者と父と母の二人が相続人であれば父母の相続分は各6分の1となります。
(3)配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるとき
配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1
兄弟姉妹が数人あるときの各自の相続分は4分の1をその人数で割った割合となります。例えば配偶者と姉と弟の二人が相続人であれば姉と弟の相続分は各8分の1となります。
(4)代襲相続人
代襲相続人の相続分は被代襲者が受けるべきであった相続分と同じです。ただし、代襲相続人が数人あるときの各自の相続分は、被代襲者の受けるべきであった相続分をその人数で割った割合となります(901条)。
例えば、被相続人に配偶者と二人の子がいたとして内一人が被相続人の死亡以前に死亡していたとします。死亡した子に被相続人の直系卑属である子(孫(胎児を含む))がいた場合には、その孫は代襲相続人になり、孫が一人であれば相続分は被代襲者と同一の相続分である4分の1、二人であれば各8分の1の相続分となります。
相続放棄と相続
家庭裁判所に相続放棄申述受理の申し立てをして認められた人は、その相続に関して初めから相続人とはならなかったものとみなされます(939条)。廃除や欠格事由に該当した場合と異なり代襲相続は発生せず、相続放棄者の子は相続人とはなりません。
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