相続登記の登録免許税の免税は持分相続にも適用されるか

皆様、こんにちは 名古屋市南区の司法書士加藤芳樹です。

さて、相続による(相続人に対する遺贈を含む)所有権移転登記(相続登記)については、課税標準額(固定資産税評価額)の0.4%が登録免許税として課税されており、相続登記の申請が妨げられている理由の一つとなっています。

そこで、相続登記促進の観点から、不動産の価額が100万円以下の土地について行う相続(相続人に対する遺贈を含む。)による所有権移転登記や、表題部所有者の相続人が行う保存登記については、令和7年3月31日まで登録免許税が免除される制度が設けられています(租税特別措置法84条の2の3第2項)(注)

では、不動産の価額が100万円を超える不動産の持分を相続した場合に、不動産価額に持分割合を乗じると100万円以下となる場合にも登録免許税の免除対象となるのでしょうか。以下解説します。

(注)参考
相続登記促進の観点から平成30年度の税制改正により、不動産の価額が10万円以下の一定の土地(法務大臣の指定する土地)について令和3年3月31日までに行う相続(相続人に対する遺贈を含む。)による所有権移転登記については、登録免許税が免除されることになり(租税特別措置法84条の2の3第2項)、その後令和3年度の税制改正により対象となる登記として表題部所有者の相続人が行う保存登記が追加され、期限も令和4年3月31日まで延長され、さらに、令和4年の税制改正により、免税の対象となる土地の価額は10万円以下から100万円以下と上限が引き上げられ、対象となる土地が全国の土地に拡大され、期限も令和7年3月31日まで延長されるに至っています。

不動産の価額に持分割合を乗じて100万円以下となれば免税対象となる

租税特別措置法84条の2の3第2項において「登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない」とあります。

この、登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、その第2項において、前項に規定する登記をする場合において当該登記が、不動産の持分の取得に係るものである場合には、当該不動産の価額は持分割合を乗じて計算した金額によるとあります。

例えば、180万円の土地の持分2分の1を対象とする相続による所有権移転登記の課税標準たる不動産の価額は90万円であり、100万円以下ですので登録免許税が免除されることになります(租税特別措置法84条の2の3第2項)(『登記研究851』139頁(テイハン,平成31年)参照)。

当然に免税とはならず申請書に法令の条項を記載する必要がある

租税特別措置法84条の2の3第2項の要件を満たしても当然に登録免許税が免除されるのではなく、以下のとおりに申請書に法令の条項を記載する必要があります。

申請書記載例(被相続人甲名義の土地の共有持分(持分2分の1,持分割合を乗じた不動産価額が100万円以下の土地)全部を乙が相続)

登記の目的  甲持分全部移転

原   因  令和4年〇月〇日相続

相 続 人  (被相続人 甲)
        名古屋市〇区〇町〇〇番地
        持分2分の1 乙

添付 書類  登記原因証明情報  住所証明情報

令和5年1月4日申請 名古屋法務局 熱田出張所

登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税

不動産の表示 (省略)

参考条文

租税特別措置法

(相続に係る所有権の移転登記等の免税)
第84条の2の3第2項 
個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和7年3月31日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成16年法律第123号)第2条第10号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。

登録免許税法

(不動産等の価額)
第10条 別表第1第1号、第2号又は第4号から第4号の3までに掲げる不動産、船舶、ダム使用権、公共施設等運営権又は樹木採取権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権、公共施設等運営権又は樹木採取権(以下この項において「不動産等」という。)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による。この場合において、当該不動産等の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、当該権利その他処分の制限がないものとした場合の価額による。

 前項に規定する登記又は登録をする場合において、当該登記又は登録が別表第1第1号又は第2号に掲げる不動産又は船舶の所有権の持分の取得に係るものであるときは、当該不動産又は船舶の価額は、当該不動産又は船舶の同項の規定による価額に当該持分の割合を乗じて計算した金額による。

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